【猶予期間を有効活用】電子帳簿保存法対策(電子データ取引編)
電子帳簿保存法とは?
どんな制度?
電子帳簿保存法とは、簡単に説明すると
「会計ソフトで作成した帳簿を、データのままで保存」
「経費の領収書や請求書をデータ化して経理処理・保存」
するためのルールを定めた制度です。
電子帳簿保存法の制度を活用すると、次のようなことが便利になります。
・紙をファイリングする手間やスペースが不要
・日付や取引先名で検索できるので、探したい書類を見つけやすい
・データ上での経理処理が可能になるので、経理担当者のリモートワークが可能になる
電子帳簿保存法の改正は無関係ではない!?
上記のような利点があったとしても、
「うちの会社は全て紙ベースで経理処理・保存を行ってきたし現状変える必要性も感じないから、うちの会社には関係のない制度だな…」
とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
電子帳簿保存法の改正により、紙ベースで経理処理・保存を行ってきた企業も、無関係ではなくなる可能性があります。
なぜなら、請求書や領収書等をデータで受け取った場合、そのデータ自体を保存することが要件となり紙に出力し保存することが認められなくなったからです。
つまり、全て紙で経理処理・保存を行ってきた企業も、取引先が経理処理に関わる証憑をデータで送付してくる場合には必ず改正に合わせて対応が必要になるのです。
電子帳簿保存法の改正、いつから?何をする?
続いて、電子帳簿保存法の改正に伴い、いつからどんな対応が必要なのか解説していきます。
電子帳簿保存法の分類
まず電子帳簿保存法は以下の3つに分けられます。
【①電子帳簿保存】と【②スキャナ保存】は帳簿を電子保存する企業と紙の書類をデータで保存する企業のみ改正による対応が必要になります。
先ほども説明したように、【③電子取引データ保存】は、全企業が対応必須の項目になります。
制度 | 内容 | 改正後の対応 |
①電子帳簿保存 | 電子的に作成した帳簿や国税関係書類をデータのまま保存 | 任意 |
②スキャナ保存 | 紙で受領・作成した書類をスキャナ等で読み取り、画像データで保存 | 任意 |
③電子取引データ保存 | 電子的に受領した取引情報(領収書や請求書等)をデータで保存 |
必須 |
電子取引データとは
ここまでで、電子的に受領した取引情報がある場合には、紙で会計資料を管理していた企業でも、
電子帳簿保存法の改正に伴い対応が必要であることはご理解いただけたかと思います。
「電子取引データ」には以下のものが該当します。
これらのデータの取り扱いがある場合には対応が必要になりますので確認しましょう。
①PDFの領収書・請求書 ②取引の内容が書かれたスクリーンショット ③電子請求書または電子請求書をクラウドサービスを利用して授受する ④クレジットカードまたは交通系ICカードなどの電子明細書等 ⑤EDIシステムの利用 ⑥FAX化された複合機を利用する ⑦請求書や領収書をDVD等の記録媒体を介して受領 |
保存の要件
電子取引データをただ保存するだけでは、電子帳簿保存法の改正に対応できていません。
電子取引データの保存は次の要件を満たす必要があります。
1.真実性の確保(改ざん防止)
◎いずれかの要件を満たす
①タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
②受け取ったデータにタイムスタンプを付与する
③データの授受と保存を、訂正履歴が残るシステムや、そもそも訂正削除ができないシステムに保存する
④社内で事務処理規定を制定し遵守する
(事務処理規定のサンプルは国税庁ホームページへ)
大規模な企業はデータを扱う人数が多くなるため、タイムスタンプや削除・訂正が管理されているシステムを導入するほうが安全でしょう。
しかし小規模の企業にとって、タイムスタンプやシステム導入は安くはないため、国税庁が公開している事務処理規定をもとに自社の事務処理規定を作成することも方法の一つです。
2.可視性の確保
◎全て満たす
①モニター(PC・ディスプレイ・スマホ等)で閲覧できること
閲覧できるように操作説明書等の備付け
②検索要件の充足
※2年前の売上が1000万円以下である場合不要
検索要件の詳細
①「日付・金額・相手方」で検索できる
②「日付・金額」について範囲指定して検索できる
③「日付・金額・相手方」を組み合わせて検索できる
※税務職員による質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じることができる場合には②③の要件は不要
上記のような検索が可能なシステムを導入していない場合にも、PC内のファイル検索機能を活用する方法やExcelで索引簿を作成する方法もあります。
例:Excel索引簿
索引簿(サンプル) | ||||
連番 | 日付 | 金額 | 取引先 | 備考 |
① | 20210131 | 110000 | ㈱霞商店 | 請求書 |
② | 20210210 | 330000 | 国税工務店㈱ | 注文書 |
③ | 20210228 | 330000 | 国税工務店㈱ | 領収書 |
④ | ||||
⑤ | ||||
⑥ | ||||
⑦ | ||||
⑧ | ||||
(引用:国税庁ホームページ)
いつから対策が必要なの?
いつから対策が必要かといいますと、実は2022年1月から改正法が適用されています。
しかし、未だに紙で経理処理をしているところが多く対応が間に合わないという声から、2年間の猶予期間が設けられました。
以下の条件の下、2023年12月31日までは紙出力での保存も認められることになりました。
1.所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認める 2.当該保存義務者が当該電磁的記録の出力書面の提示又は提示の求めに応じることができるようにしている ※「やむを得ない事情」 |
2年間の猶予期間が設けられたとはいえ、電子帳簿保存法の改正に従いほとんどの企業が対応しなければならないという状況に変わりはありません。
この2年間の猶予期間内にしっかりと体制を整えましょう。
対策の手順
続いて、電子帳簿保存法の改正にどのような手順で対策を進めていくのか紹介します。
-
①現状の取引状況を確認する
- まず、請求書・領収書など証憑類を種類ごとに分け、電子データ取引に該当するものがどの程度あるか確認します。
- その際に、電子データ取引のどの方法によって授受しているのか、保存方法がどうなっているのかまで確認すると良いでしょう。そうすることで、次の段階のデータの保存方法や保存場所を決定する際にスムーズに進みます。
-
②データの保存方法を検討・決定する
- 電子取引のデータがどの形態かによっては適正な保存法の措置が変わります。そのため自社の電子データ取引の状況によって適している保存方法も異なってきます。
自社の傾向を踏まえて保存方法を選択しましょう。
PDF |
タイムスタンプ付与済みを受領 |
クラウドサービス 電子明細 EDIシステム |
データの訂正削除を行った際に、その記録が残るもの、または訂正削除ができないシステムを利用 (クラウド上で一時的に保存されたデータをダウンロードして保存する場合は、タイムスタンプや事務処理規定での管理) |
FAX型複合機 |
タイムスタンプ付与済みを受領 自社でタイムスタンプ付与 事務処理規定を作成・運用・備え付け |
-
③データの保存場所を検討・決定する
- データの保存場所としては、自社のサーバー内や社内のフォルダ、またはシステムに保存するか選ぶことになります。
- 社内のサーバーやフォルダ内に保存する場合は、検索要件を満たす必要がありますので、ファイル名に規則性をもって保存する、Excelで索引簿を作るなど、保存の際のルールを詳細に決めなければなりません。
- 電子帳簿保存法対応のシステムであれば、検索要件を満たす機能は装備されているため、保存の際に標準化しやすいでしょう。
- ただし電子取引のデータを会計処理に活かすためには、会計システムとの連動も考慮しなければなりません。
システムを導入する場合には、会計システムと連動ができるものを選ぶと電子帳簿保存法の対策ができるのと同時に、会計処理の効率を上げることもできます。 -
④業務フローを見直す
電子取引制度では保存方法ばかりに重点を置きがちですが、保存したデータをもとに経費精算や会計入力を行うため、
承認フローや業務フローの見直しを行わなければ業務全体の効率が下がってしまいます。
例えば、承認フローはアップロードされたデータを、上司や経理担当者がそれぞれ閲覧できるようにしなければなりません。
そうでなければ、経費精算のため電子データをわざわざ紙で出力するという作業が発生するため、承認フローもデジタル化をすることが効率を上げるカギとなります。
また会計入力では、データと仕訳画面が同一画面で確認できるようにしなければなりません。さらに、未入力と入力済みデータを区別するルールやタイムスタンプを付与するタイミングなども事前に決めておかなければなりません。
会計ソフトの中には、証憑と仕訳を結び付けられるものもあり、入力漏れを防ぐ対策になります。
会計ソフトには電子帳簿保存法に対応した機能が備わっているものもあるため、これらの便利な機能を活用し、業務効率を上げる意識をもって業務フローを再構築していきましょう。
L&Bバックオフイスサポートでお手伝いできること
以上が電子帳簿保存法対策の手順になります。
とはいえ、これら全てを自力で実行するのは難しいとお考えの方もいらっしゃるかと思います。
弊社では「電子帳簿保存法の対策」についての相談も承っております。
「お客様の経理業務をもっと楽にしたい」という想いのもと、経理業務のサポートを行っておりますので、単に改正法に対応するだけでなく業務の効率化という観点を踏まえてご提案させていただきます。
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